15話 スピーカー転倒事件

 その事件の起こった時はいつだったのでしょうか?メインのスピーカーがまだトーンゾイレの時代でしたから・・・。

 ある超有名な演歌歌手のコンサートでそれは起きました。上下にトーンゾイレ2本ずつ立てて本番をしていました。照明さんが下手SSの色変えをした時、ひじがスピーカーに「コン」と当たったそうです。下手スピーカーの1本が客席に倒れて来ているではありませんか!その倒れ方は本当にスローモーションの様でした。心臓が止まりそうな勢いで、冷や汗がドッと体に吹き出していました。私はすぐさま立ち上がりその場所へ走っていました。走っている最中「業務上過失傷害罪」で実刑を覚悟しました。

 その場所に着くと、スピーカーを頭の上で抱えて困っているお客さん(男性)がいました

 「大丈夫ですか!?」

 「君~、気を付けなきゃだめだよ。はい」

 とスピーカーを持ち上げ私に舞台上に戻すように促されました。

 「どうもすみませんでした」

 と急いで立て直しましたが、このお客さんはスピーカーが頭にも当たらず、受け止めて下さっていたのでした。強い腕のお客さんで本当に良かった!良かった!

 このお客さんには感謝、感謝です。

 当時はラッシングベルトなどで転倒防止するなどのことはなく、本当にいい加減な時代だったのですね~。

教訓:現場にはラッシングベルト、ロープは忘れずに!