<超高音域の必要性>
1985年頃、犬の鳴き声のSEが必要になり我が家のビーグルの雑種「えりちゃん」に吠えさせ、SONYのDATで録音しました。スタジオで編集する段になって、DATからの再生音が実際とは似ても似つかない音だったのです。EQを操作したり色々やりましたが全く効果ありませんでした。そこで我が家で再度吠えさせじっくり聞いてみると、「ワン」の泣き声と同時に鼓膜に「ツン」とくる圧迫感がありました。DATに録音されたものにはそれがありません。
「おそらく可聴周波数範囲以外にピーク音があるのでは?」
と判断しました。そこで今度はカセットで録音しました。
カセットは当然DATより音は悪くS/Nも目立ちました。スタジオでEQを操作していると、30KHzをフルブーストすると少しですが鼓膜に「ツン」ときたのです。(当時30KHzのパラメトリックEQを搭載したミキサーはSoundcraft Series IIしかありませんでした)
ここから試作機組み立ての格闘が始まりました。20KHz~100KHzのパラメトリックEQの製作です。回路を組んでは直し、組んでは直しても「発振」するのです。部品の位置、配線方法など色々試して半年がかりで安定させました。
犬の鳴き声を録音したカセットを入力しました。
Band Width 2oct 、fo=40KHzを+16dBブーストすると鼓膜に「ツン」とくる圧迫感がはっきりしました。
他の素材もチェックしました。アナログレコードからクラシックを入力。
Band Width 2oct 、fo=70KHzを+16dBブーストすると劇場で聞くオーケストラの音になりました。
次にロックを入力。
同じくBand Width 2oct 、fo=40KHzを+16dBブーストするとシンバル、ギターがくっきりと艶やかに聞こえました。
試しにCDを入力。全く効果ありませんでした。
EQで高音域をブーストするといわゆる「音がかたくなる」というイメージですが、超高音域をブーストすると「音はかたくならず、柔らかくなり艶が増す」のです。
この結果を山城先生に報告いたしました。先生はさらに100KHzまで再生可能なテープレコーダーを開発され実験機と共に筑波大学において実験をされました。その結果が音響学会で発表された論文です。それに対する反響はCDメーカー各社から大反論が展開されました。
下の新聞コピーはその時の状況を伝えたものです。
それでも先生の実験はさらに進み、ついに「人間に超高音域成分を含んだ音楽を聴かせると、その人間の脳波にα波が発生する」という画期的な結論を見い出されました。
これは森林浴をしたり、浜辺にじっとしていると心身がリラックスするということを音響理論で説明されたことになった訳です。
これが発表されて10年後の2000年、ついに高サンプリング、高ビットのSACDの登場となった訳ですが、先生の御尽力の賜物だと尊敬致します。
結局Sin Waveの単音で測定した可聴周波数範囲で決められた16bit、44.1KHzサンプリングCDは音楽性に欠陥があると言わざるを得ないということになります。
CDショップにはリラックスCDなるものが出ていますが、以上の理由で本当の意味でのリラックス効果を得ることはできないと断言できます。
超高音域あるいは超低音域の音が人の鼓膜に振動しているか?
物理データをとったことはありませんが、鼓膜ではなく人の体のどこかで感じているのです。現在は超低音域の音は人に悪影響を与えることも分かりつつあります。
音の人間に与える影響の研究がさらに進むことを望んでおります。
2001.3.1